生活困窮日記10〜11日目
■9日目までのあらすじ
お菓子代節約のため氷砂糖をモリモリ食べている。
■10日目
この日に応募していた派遣バイトが不採用だったため予定こそ特にないが、翌日から始まる定期のバイトへの不安でソワソワを隠せずに時を過ごすことになる。
午前中は例によってアマゾンプライムで『美味しんぼ』を観る。氷砂糖が相棒な食生活を送っている身分としては、いつも会社の経費でリッチな食事を堪能する山岡士郎氏が羨ましくて仕方がない。
味覚をいかに言語領域で認識するか、というのはここ一年くらい挑んでいるテーマの一つなのだが、『美味しんぼ』内での食の感想は触覚に由来するものが多い印象を受ける。が、セリフをいちいち記録しているわけでもなく、触覚由来の感想が目立って記憶されているだけで、五感を用いた感想がそれぞれ満遍なく述べられている可能性の方が高い。あえて作品を見直して『美味しんぼ』における食の感想のデータを取ろうとするほどの熱量があるわけでもない。
午後、まぶたに重さを感じてきたため机に突っ伏して昼寝を試みるが、目を閉じて数分したところで市役所から着信が入り、家賃補助の審査が通ったため書類を受け取りにきてほしいと言われ、どうせ暇だからと電話を切ってすぐに市役所へ向かう。
帰りにスーパーへ寄り、たまごと納豆ともやしを購入する。金銭状況云々は関係なく、私は元より貧相な食生活を送っているが、納豆とたまごを毎日摂取していればそれなりに健康的な食事として成立するのではないかと思っている。一切の根拠はないが、確たる根拠と論理性を持って行動する機会なんて、生活の中にそう多くあるわけでもない。
■11日目
定期のバイト初日。なによりもまず早朝に起きられるかが心配であったが無事予定時刻に体を起こすことができ、胸をなで下ろす。
昨年夏に休職して以降、スムーズな起床ができない日が増えたが、睡眠のモニタリングを重ねた結果、
①寝る前にストレッチをする
②歯ぎしり防止のマウスピースを装着する
③床で寝る
④カーテンを開けておく
以上の四項目を行うことで起床時のダルさ解消が可能となることがわかった。個人差はあるだろうから、他人に推奨はしない。
肝心のバイトだが、そう規模の大きくないフロアに、土曜日というのにお客さんがたくさん入るわけでもなく、 客の回転率もかなり低いお店で、まだ人柄が見えているわけではないがスタッフの方々もキツいタイプの者はおらず、穏やかな雰囲気が漂っていた。約9ヶ月ほど半引きこもりのような日々を送っていた私の社会復帰のスタート地点としては、適度な環境となってくれるかもしれない。
しかしながら、新規でアルバイトを採用するのは久々らしく、固定化したスタッフによって完成されたコミュニティの中に新参者として飛び込んでいく行為はどうしてもエネルギーを要する。いくら業務内容が易しいとはいえ、馴染みのない人々の中に居続けるという不慣れな状況によって、単純作業に黙々と没頭する工場バイト以上の疲労が生じているのは間違いない。
いまやツイッターを介した交流がない者との接し方がさっぱりわからなくなってしまった私だ。部署異動が多く、あらゆる人間への適応が求められる公務員は長く勤めていたところでやはり務まらなかったかもしれない。