落葉文集

落ちて廃れた言葉の連なり

生活困窮日記 5〜6日目

■4日目までのあらすじ

 何もしていない時間が怖いから単発の工場派遣バイトに参加した。 

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■5日目

 特に予定もなく、この日は日曜で市役所も開いていないため、不安を抱えながらもなんとかリラックスに努めた。

 午前はアマゾンプライムで『美味しんぼ』を観る。Netflix等のサブスクリプションサービスはあらかた解約手続きをしたが、アマゾンプライムだけは契約し続けようと思っている。映画館へ行くことも許されない金銭状況なのだから、せめて自宅では映画やアニメを楽しみたい。

 昼食として、市役所から支給してもらった乾パンを食べた。乾パンの美味しさにモリモリと食べてしまい、乾パンも十分に贅沢品だなと思う。

 午後は図書館へ足を運んだ。小腹が空いても飲食不可で電気代もかからず、どれだけの時間を過ごしても文句を言われない。時間を潰すにはもってこいの環境である。
 図書館で読書に耽っていると、派遣会社から電話が届き、翌日の工場バイトが人手不足だから入ってくれないかと頼まれる。翌日は市役所へ行きたかったため申し出を断ったところ、じゃあ翌々日はどうかと更に問われ、了承した。

 夜はエクセルで作成した収支予測表を微調整。細かく計算した結果、11月半ばまでは黒字でいられる見込みが立ったが、何か支出項目を見落としている気がしてならない。

 

■6日目

 午前は『美味しんぼ』を観るなどしてダラダラと過ごした。

 午後から市役所へ出向き、家賃補助の申請を正式に行う。併せて、ハローワークの就労支援員と市と提携している民間人材紹介会社の職員の紹介を受けた。

 ハローワーク就労支援員のおじさんと少しの時間だけ面談をしたが、アルバイト蔑視発言が目立ったり、精神疾患歴は隠して就活をしろと提言してきたり、就活の助言からいちいち戦後日本が積み上げてきた資本主義マッチョ精神のようなものが漂っており、すごく苦手な印象を受けた。
 正直、繊細さのかけらも感じさせないあのおじさんには、私の就活を担当してもらいたくない。
 あの手のマッチョメンタルな人が多数派を占める会社なる文化に足を踏み入れる気がまたなくなってしまった。帰属したところで馴染めないし、馴染みたいとも思えない。私のわがままなのかもしれないが、わがままで片付けていい話でもないように思う。

 私たちはいま、文化の刷新を行わなければいけない段階に入っているのだと思う。
 例えば、セクハラの基準がわからなず困惑するセクハラおじさんがいたとして、それはセクハラが蓋をされている文化圏の中でその文化(=習慣)が当たり前だと思って生活をしてきているのだから、異なる文化が自らの習慣に侵食してきたらまあ困惑するのも当然だろうと思う。豚肉を当たり前に食べてきた人が、気づかぬうちに豚肉を食さない文化圏で生活をしていることに気づいて、なぜ豚肉を食べてはいけないのかわからず困惑する、ということなのだと思う。
 人権にまつわる事項なのだから宗教間の食のタブーとは異なる、と思うかもしれないが、人権だって人間が創造した文化であり、普遍的であることを目指してこそいるが決して普遍的ではなく、時間や場所に伴って変化しうるものだ。時代による文化の差は必ず生じる。
 ただ、宗教などと異なる点は、やはりその普遍性で、差や違いを認め合うことで共存を目指すのではなく、その価値観を万人が共通に所持せねばならぬということで、「現在は豚肉タブーの風潮が強くなっているのかもしれないけど、昔は豚肉を当たり前に食べていたのだから別に豚肉を食べることに問題はない」という姿勢は許されない。なぜ?という問いであるなら必要だが、単純にNoと一蹴することはあまりに軽薄だ。

 いま様々なハラスメントに苦しむ多くの者がいる。いまジェンダー意識に苦しむ多くの者がいる。いま労働に適応できず苦しむ多くの者がいる。こうした課題を直視して向き合うことが未来の創造につながるのではないだろうか。
 昔はその程度のハラスメントは当たり前で問題視されていなかった。昔は男女の役割がはっきりしていた。昔はみんな我慢していた。そんな話を持ち出されて納得する者は過去の者の中にしかおらず、現在の課題解決には至らない。
 過去の延長線上にある現在を一度否定し、新たな視点で捉え直すことで未来は開かれる。私たちは文化を書き換えようとしている段階に突入しており、そのためにいま浮上している課題を受け止めていかねばならないのだと思う。

 つまり私は、あのハローワークの就労支援員のおじさんを絶対に認めない。

 

■7〜9日目

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