落葉文集

落ちて廃れた言葉の連なり

生活困窮日記22〜24日目

■21日目までのあらすじ

 『オズの魔法使』はおもしろい。

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■22日目

 午前、徒歩30分先にある業務用スーパーへ向かう。納豆3パック39円を6つ購入する。納豆の商品化に際し、からしの付属が定着したのはなぜだろうかと疑問に思うが、調べるほどのことでも頭を悩ませるほどのことでもない。浮上した疑問符はたちまち頭の片隅へと引っ込んでいく。

 前々日、バイト先で提供しているドリンクの試飲をしたことを思い出す。
 塩キャラメルラテ。牛乳にエスプレッソを加えたものに、キャラメル風味の甘いシロップを追加した飲料。
 スウィートでリッチな味わいを連想させるネーミング、上品で優雅な見た目とは裏腹に、添加物をふんだんに利用したシロップで人工的な甘味が加えられたその代物は、お世辞にも美味しいと言えるものではない。
 カフェラテという一つの完成された品に、塩キャラメルという付加価値を与え、差別化を図り、購買意欲を煽る。ここで行われていることはマイナスイオン効果のあるドライヤーや水素水などの開発過程と近いように思う。
 買い手にとっては、塩キャラメルラテという飲料の人工的で単調な味わいなどもはや問題ではなく、「塩キャラメルラテ」という記号こそが商品であり、この記号がもたらす華美なイメージこそが重要なのだろう。人工的な甘味が欲しいのであればコカ・コーラを飲んだ方が安上がりであり、味のクオリティだって断然に高い。
 ドリルを買う者が欲しいのは穴である、とはマーケティング界における有名な格言だが、嗜好品を買う者が求めるものは必ずしも味覚体験であるとは限らない。

 午後、アマゾンプライムで『追憶の森』という映画を観る。
 日本を題材にスピリチュアルな世界が描かれる物語に既視感を覚えたが、本作の監督を務めたガス・ヴァン・サルト氏の他作品を調べたところ、4年前に観た『restless』という作品が同監督による制作であるとわかり、そこでも日本×スピリチュアルが題材にされていたと思い出して納得する。

 「日本」にスピリチュアルなイメージを抱く者がいるように、私は「塩キャラメルラテ」に飽和した資本主義のイメージを抱く。

 

■23日目

 バイトへ行く。
 ハートランドの瓶をひたすら開栓し続ける。
 客の多くが酒を飲み、アルコールの後押しを受けて場が盛り上がっている状況であるならば、こちらもアルコールを摂取しながら勤務をしても許されるような気がしてくる。
 喉の渇きを潤そうと、ジンジャーエールを口に流し込む。

 

■24日目

 午前、市が提携している人材派遣会社との面談を行う。
 職業興味検査なるものを受ける。社会的興味、研究的興味、芸術的興味が高いと結果が出る。職業例としては、政治学研究者、看護師、ケースワーカー、カウンセラー、社会学研究者が該当するらしい。ピンとくるような気もするが、ピンとこないような気だってする。
 この手の検査は占いのような類で、自分にない視点を自分事化しながら獲得することに意味があるものだ。実際のところ人に接する仕事、奉仕する仕事に対する関心は高いのだが、研究者や看護師などは提示されたところで従事できる職でもなく、結局は結果を踏まえて自分がどう考えるかが重要であり、残念ながらいまの私には職について真剣に考える気力は備わっていない。

 午後、バイトへ行く。
 勤務が終わり、余ったサンドイッチとドーナツをもらう。
 帰宅後、サンドイッチにかぶりつく。生の野菜は美味しいな、と思う。

 

■25日目 

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