落葉文集

落ちて廃れた言葉の連なり

人と会う頻度がわからない

 世の中ってのは分からない事だらけだが、多くの人が分からないような、わからないが共通認知されているようなことってのは、すでに誰かがなんらかの答えを見つけていて、インターネットでも調べりゃそんな答えが一つ二つと出てくるもんだ。

 それよりもだ、自分が分かった気になっていて、あえて他人に確認など取らないもの、こっちの方が実はよく分かっていないことなんじゃないか、というそんな思いに駆られることもある。

 例えば、有名なところでトイレの作法、作法というほどお固いことではないが、ようは「尻を拭いた後の紙を目視確認するかどうか」というあれだ。なんとなく自分の中でルール化はされてるけど、一般的にそれが多数派かどうかは知らないし、別に知らなくても問題ないからあえて確認は取らない、そう、まさにこれ。ザッツ灯台下暗し。他人が尻を拭いた後の紙の始末手順なんてわからないし、興味もない、でも自分は多数派だろう、そんなことをみんな思っているはずだが、そう思っているかどうかも確認したことないからわからないし、別に興味もない。ちなみに私は確認した後「うっわ…」と呟くまでがデフォ、たぶん多数派、圧倒的マジョリティー、壁を建設してやる。

 

 このようなことを飲みの席なんかで「○○について僕はこうなんだけど君どうしてる?」と訊くなどして、話題に上げて多数派か少数派かを決着づけるのが割と好きなのだが、まあ自分が自然当然としていることにわざわざ疑問なぞ持たないから、この類いの問いのストックも全くなく、“たぶん多数派論争”を勃発させる機会も滅多にない。こういう底の浅さが自分の一番ダメなところかもしれん、と底の浅い反省をしながらも、いくらか考えてみたがやはり特に思いつかず、議題、思いついたら教えてくれ。

 

 そんなこんなで2017年、正月の新鮮な空気とともに、熱々のお餅を頬張りながら、今年はいろんな人と会って話がしたいな〜などとぼんやり漠然とした目標をあっけらかんと立てたのもつかの間、すでに時は2月である。

 この一ヶ月、仕事中はもちろん人との関わりはあるが、昼休みに職員間で一緒に食事へ行くこともしなけりゃ、仕事終わりに飲みに行くなんて事もなく、早い話プライベートでの人付き合いはなし、ついに明日、今年初めて人と会合する予定が入っている。年末には人と遊んだ日があったから、交友は一ヶ月振りか〜なんて考えていて思った、ついに議題を見つけた、人は一体どれくらいのペースで人と会っているのだろうか、と。

 

 私は数年前まで高校生だったが、学校へ通っている頃なんてのは学校が遊び場みたいなもので、毎日同級生と会うし、しょうもない話かなんかをしてヘラヘラしていて、謂わば週5で遊んでいるような状態、あれが多くの人にとって精神的に相当な苦痛を強いるものであり、一つの狭きコミュニティに閉じ込められ、交友を強制させられる、“いじめ”なんて現象だって起きてしまうあの拷問まがいの環境を経験したから分かるが、おそらく週5で人に会うのは精神衛生上よろしくない。

 

 就職した後、地元を離れあまり知人のいない東京へ着たこともあり、人と会うペースは激減、1〜2ヶ月は仕事以外で人と会わないなんてことがザラにあるが、私の感覚としてはこれが負担もなく楽しく人付き合いをできる最適なペースであると気付いた。久々に誰かと話がしたいな、と思った時、この人は半年前に会ったばかりだから別の人にするか、なんてことがよくある。仲が良い人物でも年3回も会えば十分だ、と思っている。当然、LINEなんて、基本起動しない。

 

 私が経験している“人と会うスパン”はこの2種類のみであり、もちろん後者が多数派であり正解であると信じて疑わなかったのだが、よくよく考えてみると、例えば、どうやら恋人ってのは毎日連絡を取り合うという話を聞いたことがある。なんだそれ、地獄か?ともに地獄を歩んで行く関係性のことを恋人と称すのか?さては吊り橋効果的なやつなのか?などと疑問が次々と浮上し、いや、この類いのことは私には無縁だし考えるだけ無駄だと一蹴しようとしたが、さて、そうなると、恋人なる存在と毎日のように連絡を取る人らは、果たして友人とはどのペースで連絡なり遊ぶなりをしているのだろうか、と、やはり根本的に人は人とどれほどの頻度で会っているのだろうか、が疑問として生じてくる。

 

 私自身、実際のところ去年の交友状況はどうだったか、思い出せる限り思い出してみると、おそらく人と食事に行ったり遊びに行ったりというのは16〜7回ほど行ったと思われる。人と会うのが目的でなく、参加したイベント事でTwitterの人と会ってどうこうみたいな案件もカウントしてこの回数だ。

 しかし、あまり人と連絡を取らない部類だと思っていた私だが、こうやって数えてみると月平均1.5回ほどはプライベートな時間に人と会って過ごしているわけだ。あれ、以外と多くない?意外と多いとなると、職場の人間からの「休日どうやって過ごしてるの?」という問いに対し「ひとりで遊びに行くことが多いですね〜」と返答してきたことが誤った対応であったということになりかねない。

 

 月一以上の頻度で人と会ってるの、そこそこ多いじゃんという判断は多数派の基準なのだろうか。この辺の世の価値観は一体全体どうなっているのだろうか。

 人と会う頻度が分からない。

 

 そんなことを考えながら、昔の先輩に数年ぶりに会ってきます。やった〜。